ブドウの基礎知識(1)で、おもにブドウと人間の関わりの歴史についてご紹介しましたが、今回はさまざまなブドウのおおまかな種類と特徴について、ご紹介します。
ブドウは大きく分けて、ヨーロッパ種、アメリカ種、それらの雑種の3種類に分けられます。そのうちヨーロッパ種が最も人間との歴史が長いのですが、その理由はやはりワインの原料として使われてきたことにあります。
ヨーロッパ種と言われるブドウは、1万種以上あるといわれており、世界で最も多く栽培されています。その8割以上はワイン用で、ほかに生食用、干しブドウ用などの品種もあります。
これらのブドウの特徴としては、乾燥には強いが雨と病害虫、寒さに弱いということがあげられます。特に開花の時期に雨が多いと花が落ちてしまい、また実の時期に雨が降ると、裂果といって実が割れてしまいます。そのため湿気の多い日本は、これらのブドウの栽培には適していません。
開花の春から実が成熟する秋まで降水量が少ない乾燥地帯が、ヨーロッパ種のブドウ産地に最適なのです。国産のワイン用として有名な甲州もヨーロッパ種の一種ですが、甲府盆地の雨の少ない特定の地域だけで、栽培されてきました。
またヨーロッパ種のブドウは、マスカット香(muscat flavor)とよばれる独特の芳香をもつ種類が多く、ワインに適しているといわれます。全体的に小粒で、果皮が薄いのも特徴です。
代表的な品種としては、赤ワイン用がカベルネ・ソーヴィニヨン、ピノ・ノワール、サンジョヴェーゼ、メルローなど、白ワイン用はリースリング、シャルドネ、セミヨンなどがあげられます。どれもなんとなく聞いたことがあるのではないでしょうか。
また生食用としては、マスカット・オブ・アレキサンドリアなどがあり、これは日本でもいわゆる「マスカット」として、高級ブドウの代名詞とされています。国内では岡山県で栽培に成功し、生産されています。
干しブドウ用としては、トムソン・シードレス、ブラック・コリンズなどの種類がありますが、日本は栽培に適さず、すべて輸入されています。
アメリカ種はアメリカの野生種がもとで、ヨーロッパからブドウ栽培がもたらされたのに伴い、ヨーロッパ種の栽培に適さないアメリカ東部で栽培が始まったものです。
病害虫に強く、フォクシー香(foxy flavor)と呼ばれる特有の甘い香りが特徴ですが、風味はヨーロッパ種に劣るので、おもにジュース原料や生食用として利用されています。
ナイアガラ、コンコードなどの品種があります。
そしてヨーロッパ種とアメリカ種の両方の特徴を活かした品種として、両方の雑種がアメリカを始め各地で栽培されるようになりました。
病害虫や雨、寒さにも強く、風味もよいので、日本ではこれが主流となっています。おもな品種としては、デラウェア、キャンベル・アーリー、巨峰、マスカット・ベイリーA、ピオーネなどで、生食やジュース原料はもちろん、ワイン原料としても利用されています。
日本では、ワイン用の品種が育ちにくいこともあり、ヨーロッパとは逆に生産量の8割が生食用となっており、ワイン用は1割強です。歴史の長さがあまりに違うので仕方ないとは思いますが、近年日本でもワインは定着してきているので、独自の品種を使った、独特なワインを期待したいですね。
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