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日本を代表する野菜だいこん |
寒い時期になると、おでんや鍋物などのあったかい料理が主役になります。その中でひときわ存在感のある野菜が、だいこんではないでしょうか。
よく煮込んだおでんでは、だしをすってなんともいえないおいしさで、身も心もあたたまります。またたくあんも、忘れてはならない、だいこんから作る定番のおかずです。今回はそんな日本の食卓に欠かせないだいこんについてご紹介します。
だいこんの原産地は、コーカサスからパレスチナ地方といわれていますが、定説はありません。とても古くから食用にされており、5000年前のエジプトのピラミッド建設に使われた奴隷たちの食事に、出されたことが記録に残っています。
日本でも古事記や日本書紀にオオネとして出てきますが、室町時代ごろからだいこんと呼ばれるようになり、だんだん大衆化していきました。春の七草のひとつである、すずしろもだいこんのことです。ちなみにすずしろとは、すずな(かぶ)の代わりという意味です。
だいこんにちなんだ言葉もいろいろありますが、中でもユニークなのは「大根役者」ではないでしょうか。これは、だいこんで食中毒になる(あたる)ことがないので、演技が下手で決して当たることのない役者のことをそう呼ぶようになったのです。
だいこんは、日本で一番生産量の多い野菜ですが、その種類も非常に多く、形や色などもバリエーションに富んでいます。
有名な品種には、代表的な産地の名前をとって、練馬、宮重、守口などと名づけられており、他にも聖護院や桜島などユニークな形のだいこんも多くあります。四季を通して栽培されますが、夏にまいて秋に収穫するものが多く、秋だいこんと呼ばれます。
昔からハレの日の食物や神様へのお供えとしてよく使われるだいこんですが、いろいろな栄養素が多く含まれることもよく知られています。
まずはビタミンC。サラダやだいこんおろしなど加熱しない料理では、ビタミンCの良質な供給源といえます。またでんぷんの消化を助ける天然の消化剤といわれるアミラーゼも豊富で、おもちの食べすぎに効くといわれます。
他にも揚げ物などの油の抗酸化作用や、焼き魚の焦げに含まれる発ガン作用を抑える効果があり、それらにだいこんおろしを添えることもよくあります。もちろん食物繊維も豊富なので、日ごろ野菜が足りない方は、ぜひ積極的にとりたいですね。
またお店で売っているだいこんを買うと、あまり目にすることもない葉ですが、これも良質な緑黄色野菜です。カロチン、ビタミンC、カルシウム、鉄分、カリウムなどが豊富に含まれ、油いためなどにすると、おいしくいただけます。
ではなぜそんな良質な葉を落としてしまうのでしょうか。実は葉をつけたままにしておくと、だいこんの水分が葉からどんどん蒸発して、だいこんがしなびてしまうのです。そのため収穫してから食卓にのぼるまで時間がかかる一般的な流通過程では、葉を落とさざるを得ないわけです。
もし近所に畑がある方は、ぜひ葉のついただいこんを買ってみてください。そのときは、すぐに葉を落として料理することをお勧めします。
ところで「だいこんを千六本に切る」という言葉を聞いたことがあると思いますが、なぜ千六本なのかご存知ですか。
日本語では千切りのことですが、中国では細く切ることを「センルオボウ」といいます。ルオボウとはだいこんのこと。このセンルオボウの読みが日本に伝わって、千六本という字が当てられたというわけです。 |
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