ケーキの香り付けにお酒を使うときに、おもな素材と同じ原料から作られたお酒を使う(たとえばオレンジのケーキには柑橘系のお酒)のが、うまく作るコツです。そんなとき便利なのが、いろいろな素材のバリエーションがあるリキュール。
今回はそのリキュールについて、おもにフルーツ系を中心にご紹介します。
「お酒の基礎知識 醸造酒と蒸留酒」で、お酒は醸造酒と蒸留酒に分けられることをご紹介しましたが、リキュールとは蒸留酒(スピリッツ)に香りや味の成分を混ぜて、風味を豊かにしたお酒の総称です。その名前は、ラテン語で「溶かし込む」ことを意味する「リケファケレ」から生まれました。
なおリキュールとはおもにフランス語圏での名称で、英語圏では「心に役立つ」という意味のコーディアルと呼ばれます(ただしアルコール飲料以外も含む)。
もともと蒸留酒は薬の性格が強かったので、さらに薬草を加えればもっと効果が高くなるという発想で、リキュールは生まれました。そのためか、中世ヨーロッパでは修道院でさまざまなリキュールが作られ、今でも伝統的なハーブ系のリキュールは、修道院生まれのものが多くあります。
そして大航海時代にアジアから砂糖や果物など多くの素材がもたらされたことにより、リキュールのバリエーションも増えていきました。
18世紀になると、お酒に医薬効果よりおいしさや楽しみを求めるようになります。さらに上流階級の婦人が衣装やアクセサリーにあわせた色鮮やかなお酒を求めるようになったので、原料や色の工夫が進みました。その結果、リキュールは液体の宝石とも呼ばれるようになり、より美しいものが作られていったのです。
リキュールの定義として、EU(欧州連合)ではアルコール分15%以上の飲料のうち、糖分を1リットルあたり100g以上含むものとしています。
なおリキュールの成分を示すときにエキス分を表示することがあります。これはどれだけ固形成分が含まれているかを意味しており、そのうちのほとんどが糖分なので、この数値が高いほど甘味が強いと判断できます。ケーキに使う場合は、砂糖の量を調整するときの参考にしてください。
それでは代表的なフルーツ系のリキュールについて、簡単にご紹介します。それぞれその系統のフルーツを使うケーキにおすすめです。
●キュラソー
キュラソーとは、オレンジ系のリキュールの総称です。17世紀後半に、南米ベネズエラ沖のオランダ領キュラソー島特産のオレンジの皮が本国に持ち帰られ、それを蒸留酒に配合して生まれました。
一般的にオレンジの果皮を薄くそいで、それをお酒に漬け込んで作られます。無色透明なホワイトキュラソーと、皮由来の琥珀色のオレンジキュラソーが代表ですが、ホワイトキュラソーを青や赤に着色したものもあります。
19世紀にフランスで生まれた、コアントローやグラン・マルニエなどが代表的な銘柄です。
●チェリー
蒸留酒にチェリーを漬け込み、赤い色や風味を移して作られるチェリーブランデーが代表。チェリーの赤い色が特徴です。
そのほかに、マラスカ種のチェリーを原料に作った蒸留酒を熟成させたマラスキーノや、チェリーを原料に作ったブランデーであるキルシュヴァッサーに砂糖を加えたリキュールなどが有名です。
●カシス
カシスとは、日本名クロスグリという、黒い小粒の果物です。その実をつぶして蒸留酒に漬けて熟成させ、砂糖を加えてリキュールを作ります。
EUではリキュールのうち1リットルあたり250g(カシスのみ400g)以上の糖分を含むものは、「クレーム・ド・〜」という表記が認められています。これは糖分が多いお酒は、クリームのような濃厚な味わいとなるためです。そのため、カシス原料のリキュールには、クレーム・ド・カシスと名乗っているものが多く、とても甘いお酒です。
●フランボワーズ
キイチゴ(ラズベリー)を漬け込んだリキュール。赤い色が特徴です。これもクレーム・ド・フランボワーズと名づけられたものが多くあります。
ベリー系では、ほかにイチゴ(ストロベリー)やブルーベリーのリキュールもあります。
他にも洋ナシ(ペア)、桃(ピーチ,ペシュ)、リンゴ(アップル,ポム)、メロン、バナナ、パイナップル、パッションフルーツなど、実に多くの種類があるので、お好みのフルーツリキュールをこだわって探してみてはいかがでしょうか。
PR フルーツ系のリキュールがいろいろあります。
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